犬の散歩代行から始めた副業が、月3万円の安定収入になるまで
「動物が好きなだけで副業になるのか?」——正直、筆者も最初はそう思っていた。本業はIT企業の営業職。平日は朝9時から夜7時まで働き、休日は疲れて寝ているだけの生活だった。
転機は2024年の秋、近所のマンションに住む共働き夫婦から「出張中の3日間、猫の世話を頼めないか」と声をかけられたことだ。猫2匹の食事と水替え、トイレ掃除。1日30分ほどの作業で、お礼に3日分で6,000円をいただいた。「これ、副業として成り立つのでは」と直感した。
あれから1年半。いまはペットシッターのマッチングサービスに登録し、月に平均8〜10件の依頼をこなしている。月収は28,000〜35,000円。本業に支障が出ない範囲で、好きな動物と触れ合いながら収入を得られている。
この記事では、筆者の実体験をもとに、ペットシッター副業の始め方を具体的に解説していく。
ペットシッター副業の市場規模と将来性
ペットシッターの需要は年々拡大している。矢野経済研究所の調査によると、2025年のペット関連サービス市場は約1兆2,800億円。そのうちペットシッター・散歩代行の市場は推定380億円規模に達しており、前年比12%増と高い成長率を維持している。
背景にあるのは以下の3つの要因だ。
- 共働き世帯の増加: 2025年時点で共働き世帯は全世帯の68.7%。日中のペットケア需要が拡大
- ペットの高齢化: 犬の平均寿命は14.7歳、猫は16.0歳(2025年ペットフード協会調べ)。高齢ペットの通院付き添いニーズも増加
- 旅行需要の回復: ペットホテルの予約が取りにくい繁忙期(GW、お盆、年末年始)に、個人シッターへの依頼が集中
特に都市部では、ペットホテルの平均料金が1泊5,000〜8,000円と高止まりしており、「自宅に来てもらえるシッターのほうが安くて安心」という飼い主が増えている。
ペットシッターに必要な資格・届出
動物取扱業の登録は必要か?
結論から言えば、反復継続して報酬を得る場合は「第一種動物取扱業」の登録が必要になる。これは動物愛護管理法に基づく義務で、違反すると100万円以下の罰金が科される可能性がある。
ただし、登録には実務経験や資格要件がある。主なルートは以下の通りだ。
| 登録要件 | 具体的な方法 | 所要期間 | 費用目安 |
|---|---|---|---|
| 実務経験 | ペットショップ等で6ヶ月以上勤務 | 6ヶ月〜 | 0円(給与あり) |
| 資格取得 | 愛玩動物飼養管理士(2級) | 約6ヶ月 | 32,000円 |
| 資格取得 | ペットシッター士 | 約4ヶ月 | 72,000円 |
| 資格取得 | JKC愛犬飼育管理士 | 1日講習 | 7,300円 |
筆者は愛玩動物飼養管理士2級を取得した。通信教育で約6ヶ月、費用は32,000円。試験の合格率は約80%で、動物の基礎知識があれば独学でも十分合格できるレベルだった。
開業届と確定申告
副業でも年間所得が20万円を超える場合は確定申告が必要になる。月3万円を目指すなら年間36万円。経費(交通費、備品、保険料など)を差し引いても20万円は超える可能性が高い。
開業届は税務署に提出するだけで費用は0円。青色申告承認申請書も同時に出しておけば、最大65万円の控除が受けられる。筆者は副業開始3ヶ月目に提出した。
ペットシッター副業の始め方【5ステップ】
ステップ1: 資格を取得する(1〜6ヶ月)
前述の通り、愛玩動物飼養管理士2級が費用対効果の面でもっともバランスが良い。通信教育のため、本業の合間に1日30分ほどの学習で取得できる。
ステップ2: 動物取扱業の登録をする(2〜4週間)
資格取得後、管轄の保健所に申請する。提出書類は5〜6種類あるが、記入自体は1時間ほどで終わる。登録手数料は自治体によって異なるが、15,000〜20,000円程度が一般的だ。審査期間は2〜4週間。
ステップ3: マッチングサービスに登録する
個人で集客するのは難易度が高いため、まずはマッチングサービスを活用するのが現実的だ。主要なサービスを比較すると以下のようになる。
| サービス名 | 手数料率 | 案件数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| PETOKOTO Sitters | 20% | 多い | 審査厳しめ・単価高め |
| ペットシッターSOS | 15% | 中程度 | 老舗・信頼度高い |
| DogHuggy | 25% | 多い | 犬の散歩代行に強い |
| ニチイのペットシッター | 契約制 | 安定 | 時給制1,200〜1,500円 |
筆者はPETOKOTO SittersとDogHuggyの2つに登録している。手数料は高めだが、その分利用者の質が高く、トラブルが少ない印象がある。
ステップ4: プロフィールを充実させる
マッチングサービスでは、プロフィールの充実度が依頼数に直結する。筆者が意識しているポイントは3つ。
- 自分のペット飼育歴を具体的に書く(「犬と15年暮らしています」より「柴犬を8歳から看取りまで飼育し、現在はトイプードル2歳と暮らしています」の方が信頼される)
- 顔写真は動物と一緒に写る
- 対応可能な動物種と、できないことを明記する(爬虫類は不可、など)
ステップ5: 最初の5件で実績と評価を積む
最初の5件は「実績を作る期間」と割り切ること。相場より少し低めの料金設定でも構わない。筆者は初回を1時間2,000円(相場は2,500〜3,500円)に設定し、最初の1ヶ月で5件の高評価レビューを獲得した。6件目からは3,000円に引き上げても依頼は途切れなかった。
月3万円を稼ぐための料金設定と稼働計画
現実的な収入シミュレーション
月3万円を達成するための計算はこうなる。
- 1回あたりの報酬: 3,000円(1時間の訪問シッティング)
- マッチングサービス手数料: 20%(600円)
- 手取り: 2,400円/回
- 月3万円に必要な件数: 約13件
- 週あたり: 約3件
週3件なら、平日の退勤後に1件、土日に1件ずつでクリアできる。筆者の場合、平日夕方の犬の散歩代行(18:00〜19:00)が安定して入りやすい。
単価を上げるコツ
経験を積んだら、以下のオプションで単価アップを狙える。
- 投薬対応: 高齢ペットへの投薬ができると+500〜1,000円
- 長時間シッティング: 半日(4時間)で8,000〜10,000円
- 宿泊シッティング: 飼い主宅に泊まり込みで1泊12,000〜15,000円
- 多頭飼い対応: 2頭目以降+1,000円/頭
筆者は投薬対応と多頭飼い対応を行うことで、平均単価を3,800円まで引き上げることができた。
ペットシッター副業のリアルな注意点
動物の事故・体調急変リスク
もっとも怖いのがこのリスクだ。シッティング中にペットが体調を崩した場合、適切な対応が求められる。筆者も一度、預かっている猫が急に嘔吐を繰り返す事態に直面した。飼い主に連絡し、かかりつけ動物病院に搬送して事なきを得たが、あのときの緊張感は今でも忘れられない。
対策として、以下を必ず事前に確認しておくこと。
- かかりつけ動物病院の住所・電話番号
- 飼い主の緊急連絡先(2つ以上)
- ペットの既往歴・アレルギー情報
- ペットシッター向け賠償責任保険への加入(年間8,000〜15,000円)
本業の就業規則を確認する
副業禁止の会社に勤めている場合は、当然ながら確認が必要だ。2024年の厚生労働省調査では、副業を認めている企業は全体の55.2%。認めていない企業でも「届出制」で許可される場合があるため、人事部門に相談してみる価値はある。
繁忙期と閑散期の波
GW・お盆・年末年始は依頼が殺到し、1月〜2月は閑散期になる。筆者の場合、12月の売上は48,000円だったのに対し、2月は18,000円まで落ち込んだ。年間で平均して月3万円を維持するには、繁忙期にしっかり稼いでおく計画性が必要になる。
よくある質問
Q. 自宅でペットを預かる「ペットホテル型」もできる?
可能だが、自宅で預かる場合は「保管」の動物取扱業登録が追加で必要になる。また、飼育施設の基準(ケージのサイズ、換気、温度管理など)を満たす必要があり、初期投資が10万円以上かかる場合もある。最初は「訪問型」から始めることを勧める。
Q. 猫だけ・犬だけの対応でも大丈夫?
問題ない。むしろ「猫専門シッター」のように特化したほうが指名されやすい。筆者のシッター仲間には猫専門で月5万円を安定して稼いでいる方もいる。
Q. 交通費は誰が負担する?
一般的にはシッター負担だが、サービスや個人の取り決めによる。筆者は「片道30分以内は無料、それ以上は実費請求」としている。移動時間も考慮して、自宅から片道20分圏内の依頼に絞るのが効率的だ。
まとめ:好きなことを副業にする第一歩
ペットシッター副業は、動物好きにとって「好きなことでお金を稼ぐ」もっとも現実的な選択肢の一つだ。資格取得に数ヶ月かかる点はハードルだが、逆に言えばそのハードルがあるからこそ、参入者が限られ、単価を維持できている。
まずは愛玩動物飼養管理士2級の資料請求から始めてみてほしい。資格取得までの6ヶ月間は、SNSで地域のペット情報を発信しながら、将来の顧客との接点を作っておくと、登録後のスタートダッシュが切りやすくなる。
月3万円という金額は、生活を劇的に変えるほどではないかもしれない。しかし「好きなことで得た3万円」は、残業代の3万円とはまったく違う満足感がある。筆者はそう実感している。





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