副業の管理が破綻した夜のこと
2024年12月、確定申告の準備を始めた筆者は頭を抱えていた。
本業のかたわらWebライティングとコンサルティングの副業を続けて3年目。案件の管理はGoogleスプレッドシート、請求書はMisoca、経費の記録はExcel、スケジュールはGoogleカレンダー。4つのツールにデータが散らばり、2024年分の副業収入を正確に集計するだけで丸2日かかった。
しかも集計が終わった後に、請求漏れの案件が2件見つかった。合計で87,000円。もし確定申告後に気づいていたら修正申告が必要になるところだった。
この経験をきっかけに、2025年1月から副業管理をすべてNotionに集約した。あれから1年3ヶ月。今では案件受注から請求・入金確認・確定申告用の仕訳データ出力まで、Notionひとつで完結している。月末の集計作業は15分で終わるようになった。
本記事では、筆者が実際に運用しているNotionの副業管理システムを、テンプレートの構成から運用ルールまで具体的に公開する。
なぜNotionが副業管理に適しているのか
副業管理ツールの候補はいくつもある。Trello、Asana、Monday.com、あるいはシンプルにExcel。その中でNotionを選んだ理由は3つだ。
1. データベース間のリレーション機能
Notionの核心は「リレーショナルデータベース」にある。案件データベースと収入データベースをリレーションで紐付ければ、案件ごとの売上集計がリアルタイムで自動更新される。Excelのvlookup関数で頑張っていた時代が嘘のように楽になる。
2. テンプレート機能による入力の標準化
新規案件を登録する際、毎回手入力で項目を埋めるのは面倒だし、入力漏れも発生する。Notionのテンプレート機能を使えば、クライアント名・報酬額・納期・ステータスなどの項目が自動でセットされるため、登録作業は1件あたり約90秒で完了する。
3. 無料プランでも十分に使える
Notionの無料プランは、個人利用であればページ数・データベース数に制限がない。副業管理に必要な機能はほぼすべて無料プランの範囲内でカバーできる。筆者も最初の6ヶ月は無料プランで運用していた。
Notion副業管理システムの全体設計
筆者が運用している管理システムは、5つのデータベースで構成されている。
| データベース名 | 役割 | 主な項目 | 更新頻度 |
|---|---|---|---|
| 案件マスター | 案件の一覧と進捗管理 | クライアント名、報酬額、納期、ステータス | 案件発生時 |
| 収入台帳 | 入金記録と売上集計 | 入金日、金額、案件リレーション、源泉徴収額 | 入金確認時 |
| 経費台帳 | 経費の記録と分類 | 日付、金額、勘定科目、レシート画像 | 支出発生時 |
| クライアントDB | 取引先の情報管理 | 社名、担当者、連絡先、支払サイト | 新規取引時 |
| 確定申告ワーク | 申告用データの集約 | 年間収入合計、経費合計、所得額、控除額 | 月次 |
この5つのデータベースがリレーションで相互に接続されている。案件マスターのステータスを「入金済」に変更すると、収入台帳に自動で反映される仕組みだ。
案件マスターの構築手順
最も重要な「案件マスター」の具体的な構成を解説する。
プロパティ設計
案件マスターには以下の12項目を設定している。
- 案件名(タイトル):「〇〇社_LP制作_2026年3月」のように命名規則を統一
- クライアント(リレーション):クライアントDBへのリンク
- 案件種別(セレクト):ライティング / デザイン / コンサル / その他
- 報酬額(数値):税抜き金額で統一
- 源泉徴収(チェックボックス):源泉徴収の有無
- 受注日(日付)
- 納期(日付)
- ステータス(セレクト):見積中 → 受注 → 作業中 → 納品済 → 請求済 → 入金済
- 請求書URL(URL):Misocaなど外部ツールの請求書リンク
- 稼働時間(数値):時間単位で記録
- 時給換算(関数):報酬額 ÷ 稼働時間で自動計算
- メモ(テキスト):特記事項
ビュー設計
同じデータベースに対して、目的別に4つのビューを作成している。
- テーブルビュー:全案件の一覧表示。月次の振り返りに使用
- ボードビュー:ステータス別のカンバン表示。日常の進捗管理に使用
- カレンダービュー:納期ベースの表示。スケジュール確認に使用
- ギャラリービュー:クライアント別の案件表示。営業分析に使用
筆者の場合、普段はボードビューを常時表示し、毎月1日にテーブルビューで月次集計を確認するルーティンにしている。
収入台帳と経費台帳の連携
収入台帳の運用ルール
入金を確認したら、以下の手順で収入台帳に記録する。
- 案件マスターのステータスを「入金済」に変更
- 収入台帳に新規レコードを作成
- 入金日、金額、案件リレーションを入力
- 源泉徴収額がある場合は差引前の金額と源泉額を別々に記録
この運用を徹底したことで、2025年分の確定申告では収入の集計が即座に完了した。以前は2日かかっていた作業だ。
経費台帳の勘定科目設計
副業の経費として認められる主な勘定科目を、セレクトプロパティにあらかじめ設定しておく。
- 通信費(Wi-Fi、スマホ回線の按分)
- 消耗品費(文具、USBメモリなど)
- 新聞図書費(書籍、有料記事)
- 旅費交通費(打ち合わせの交通費)
- 支払手数料(クラウドソーシングの手数料)
- 雑費(上記に該当しないもの)
筆者の場合、副業経費は月平均12,800円。年間で約154,000円を経費計上している。経費のレシートはスマホで撮影してNotionのページに添付しておけば、税理士への共有も簡単だ。
確定申告を「怖くなくする」仕組み
副業をしている人の多くが「確定申告が面倒で不安」と感じている。筆者もかつてはそうだった。しかしNotionで日常的にデータを蓄積しておけば、申告時期に慌てる必要はない。
月次チェックリスト
毎月1日に以下の5項目を確認するチェックリストをNotionに作成している。
- 当月の入金がすべて収入台帳に記録されているか
- 経費の未記録がないか(クレジットカード明細と照合)
- 案件マスターのステータスに「請求済」のまま放置されているものがないか
- 源泉徴収額の累計が正しいか
- 確定申告ワークの年間累計が更新されているか
この5分のチェックを12回やるだけで、確定申告の準備は実質的に完了する。年末に一気にやろうとするから辛くなるのであって、月次で少しずつ整理すれば何も怖くない。
確定申告ワークの活用
確定申告ワークには以下のロールアップ関数を設定している。
- 年間売上合計(収入台帳からロールアップ)
- 年間経費合計(経費台帳からロールアップ)
- 年間所得額(売上 − 経費の関数)
- 源泉徴収額合計
- 概算納税額(所得額 × 税率の関数で概算表示)
2025年分の筆者の副業所得は約1,680,000円。経費154,000円を差し引いた課税所得は約1,526,000円だった。この数字がNotionのダッシュボード上でリアルタイムに確認できるため、「今年はあとどのくらい稼ぐべきか」の意思決定にも使える。
Notion副業管理でよくある失敗と対策
1年以上運用してきた中で、筆者自身が陥った失敗パターンを3つ共有する。
失敗1:プロパティを増やしすぎる
最初は張り切って20個以上のプロパティを設定した。結果、入力が面倒になり、2週間で記録が滞った。現在は12項目に絞っている。「入力に2分以上かかるなら項目が多すぎる」が判断基準だ。
失敗2:テンプレートを作らない
毎回ゼロから入力するのは非効率なだけでなく、入力漏れの原因になる。案件種別ごと(ライティング用、コンサル用など)にテンプレートを用意しておくことで、登録作業は大幅に短縮される。
失敗3:振り返りをしない
データを蓄積するだけでは意味がない。筆者は毎月1日に「先月の時給換算トップ3」と「ワースト3」を確認し、時給の低い案件は継続するかどうかを判断している。この振り返りを始めてから、平均時給が2,800円から4,200円に改善された。
スマホからの入力を習慣化するコツ
Notionの副業管理は、PCだけでなくスマホからの入力を前提に設計すべきだ。
案件の受注連絡はSlackやメールで届くことが多く、移動中に確認することも珍しくない。その場でNotionアプリを開いて案件マスターに登録してしまえば、後回しによる記録漏れを防げる。
筆者はiPhoneのウィジェットにNotionの案件マスターへのショートカットを配置している。通知が来たら即座にNotionを開ける導線を作ることで、「あとで登録しよう」の”あとで”が発生しなくなった。
他ツールとの棲み分け
「Notionだけで全部やるべきか」という質問をよく受けるが、答えはNoだ。
請求書の発行はMisocaやfreee、会計処理はfreeeやマネーフォワードクラウドに任せるほうが効率的だ。Notionはあくまで「管理のハブ」として使い、専門機能は専門ツールに委ねる設計が正解だろう。
具体的な棲み分けとしては、以下の運用を推奨する。
- 案件管理・進捗管理 → Notion
- 請求書発行 → Misoca or freee
- 会計処理・確定申告 → freee or マネーフォワード
- スケジュール管理 → Googleカレンダー(Notion埋め込み)
- コミュニケーション → Slack or Chatwork
Notionからこれらのツールへのリンクを貼っておけば、ハブとしての機能は十分に果たせる。
まとめ:副業管理は「仕組み」で解決する
副業の管理が大変なのは、「意志の力」で乗り切ろうとするからだ。
仕組みを作れば、意志の力に頼る必要はなくなる。Notionで案件・収入・経費のデータベースを構築し、月次チェックリストで定期的に整理する。たったこれだけで、確定申告の恐怖からは解放される。
筆者が副業管理のために費やす時間は、月末の15分と毎月1日の5分。合計で月20分だ。以前の「月末に半日かけて集計」から比べれば、年間で約70時間の節約になる。
まだExcelやスプレッドシートで副業を管理しているなら、今月からNotionに移行してみてほしい。最初の設計に2〜3時間かかるが、その投資は初月で回収できるはずだ。
あわせて読みたい





コメント